昨今、有名人が大麻所持で検挙されたニュースや、大麻の違法使用のまん延などがメディアを賑わせています。
多くの報道では、大麻の中毒性や副作用、また幻覚などの危険性について述べていますが、こうした報道には虚実混ざっており、大麻に関して正しい理解を得にくいという課題があります。
ですが、海外に目を向けると、大麻が嗜好品や医療目的で合法化されるケースが相次いでおり、大麻が様々な病気の治療に役立つことが分かっています。
果たして、大麻は本当に危険薬物なのかどうか、なぜ海外では合法化が進んでいるのか?
今回は、大麻に関する安全性や、海外での合法化事情についてお伝えします。
世界的に規制緩和の大麻
大麻というと、摂取すると中毒になったり、また幻覚や妄想などの副作用が伴う、といった危険なイメージがあるかもしれません。
こうした、大麻に関するネガティブなイメージや危険性に対して、海外での合法化の反響もあって国内でも異を唱える声が増えています。
また、現在では様々な研究によって、大麻がもたらす具体的な効果が詳しく解明されつつあります。
それまで大麻を違法としていた多くの国が、医療目的や非犯罪化などで使用を認めるケースが増えており、大麻の規制緩和が世界的に進みつつあります。
大麻というと、日本では長らく薬物として扱ってきたため、危険なイメージを持つ方が大半だと思います。 ですが、海外に目を向けると、世界各国で大麻の合法化が進んでおり、嗜好・医療目的で合法化する国や州の数は、月単位で増え続けています。 大麻合[…]
医療用大麻の規制緩和が行われている国
大麻を合法化する目的は大きく2つあり、医療目的で合法化するケースと、嗜好品としての使用を認めるケースがあります。
実際のところ、医療目的で合法化する国の方が、嗜好目的で合法化する場合よりも遥かに多く、北米、南米、欧州、アジア、オセアニア、中東などの全地域にわたって、26ヵ国以上もの国で医療大麻が使用されています。
代表的な例がアメリカで、同国では全50州のうち33州で医薬品として大麻が処方されており、またニューヨーク州のように嗜好用大麻は違法としつつも、医療大麻は認める、といったケースもあります。
アメリカや欧州と比べて薬物に対する規制が厳しいアジアでも医療大麻が合法化されつつあり、2018年には隣国の韓国が、翌2019年にはタイとフィリピンが、医療大麻の合法化に踏み切っています。
嗜好用大麻の規制緩和が行われている国
一方で、嗜好品としての大麻使用を認める国は、医療大麻と比べると数は少ないですが、同じく世界各国で合法化や規制緩和が行われています。
嗜好用大麻の場合、法律で全面的に合法化するケースと、大麻を違法としたまま罰則を軽減したり、条件付きでの使用を認めるケースなど、国によって様々です。
アメリカでは、現時点で10州で嗜好用大麻が合法化されており、カリフォルニア州などの合法州では「ディスペンサリー(大麻専用薬局)」で大麻を買うことが可能で、外国人であっても身分証明書があれば購入できます。
この他、カナダやウルグアイ、チェコなどでは国全体で大麻を合法化しており、こうした大麻合法国は現時点で6ヵ国あります。
ですが、多くの国では規制緩和や、罰則の軽減といった非犯罪化という形で大麻を部分的に認めており、例えばドイツでは、少量(ベルリンでは15グラム以下)の大麻所持や使用であれば、罪に問われません。
こうした合法化、非犯罪化の事例を含めると、世界中で嗜好用大麻を認めている国は17ヵ国あります。この中には、例えばデンマークなど、一部地域のみでの大麻使用を事実上黙認しているケースもあります。
大麻の規制緩和が行われている理由
このように、大麻には従来のような麻薬としてのイメージから、医療や健康に役立つクリーンな植物、というイメージが定着しつつあります。
日本とはまるで真逆を行くかのような潮流ですが、大麻産業は今後大きなビジネス市場になるとされており、2032年にはグローバル規模で22兆円規模になるとの予測もあります。
こうした、大麻の合法化や規制緩和が世界中で進んでいる理由は何でしょうか。以下で説明します。
大麻は医療用途として効果がある
大麻がポジティブに捉えられる最も大きな理由として、医療効果が挙げられます。
様々な研究によって、大麻が多くの病気の治療や症状の緩和に役立つことが分かっており、大麻が効能をもたらす病気は250種類以上あると言われています。
この中にはうつ病やがん、てんかん、気管支喘息、アルツハイマー、強迫性障害など、呼吸器系の疾患から認知症、精神疾患など様々な病気が含まれています。
また、大麻には化学治療に伴う強い副作用がなく、化学薬品と比べて依存性が著しく低いことから、大麻が医療分野で画期的な治療薬になることが明らかになりつつあります。
大麻は、長きにわたって多くの国で違法だったため、医療分野での有効性を調べる研究は未だ多くありませんが、合法化に伴い更に詳しく解明されていきそうです。
青少年の犯罪抑制のため
嗜好品目的で大麻を合法化、規制緩和する主な理由として、既に国内で大麻がまん延し過ぎており、規制が機能しないという問題が挙げられます。
例えば、カナダでは2018年から嗜好用大麻が解禁されましたが、前年の2017年には、15~64歳のカナダ人のうち、約490万人が違法ルートで大麻を入手しており、約57億ドル(約4,740億円)が違法取引に費やされたという調査結果があります。
また、同年には国外から約3億ドル(約250億円)の大麻が密輸入されており、違法市場での大麻の売り上げは12億ドル(約1,000億円)とのことです。
このため、大麻が密売組織の資金源になりやすく、また多くの人が違法取引などの犯罪行為に手を染めやすいという事情があります。大麻を合法化することで犯罪率を減らし、密売組織の資金源を断つことも目的です。
他の麻薬の台頭を防ぐ
この他、合法化に踏み切る理由として、大麻以外のドラッグのまん延を阻止しようとする目的があります。
大麻は他のドラッグと比べて比較的安全で、依存性はカフェインよりも低いと言われています。このため、大麻は一般的に「ソフトドラッグ」に分類されます。
一方で、覚せい剤やコカイン、ヘロインなどは極めて依存性が高く、また禁断症状の激しさ、致死率の高さから「ハードドラッグ」と言います。
多くの国ではこうしたハードドラッグのまん延が問題になっており、このため比較的安全な大麻を合法化することで、ハードドラッグに手を出す人の数を減らそうというのも、合法化の理由の一つです。
例えば、オランダは世界に先駆けて1970年代から大麻を非犯罪化していますが、主な理由としてハードドラッグの流通を抑えることを挙げています。
大麻を摂取するとどうなる?安全?
ここまで、主に大麻の合法化について述べてきましたが、実際に大麻は本当に安全なのでしょうか。
一般的に、大麻を摂取した際の効果として、高揚感や多幸感、五感が鋭敏になる、時間感覚がゆがむ、空腹感の増進などが挙げられます。
また、依存性に関しては、上記でも延べた通りカフェインよりも低く、タバコやアルコールよりも中毒性が低いことが、研究によって分かっています。
ですが、大麻といっても完全に安全という訳ではなく、乱用すれば悪影響が伴います。
みなさんは大麻の副作用と聞いてどんな症状を思い浮かべますか? 日本では大麻は覚せい剤やヘロイン・コカインなどと違法なドラッグとまとめて語られることが多く、覚せい剤の副作用と混ざって認識している方も多いようです。 よく「ハイになる」「幻覚[…]
大麻を摂取すると生じる症状
多くのメディアでは、大麻の使用による様々な悪影響について述べていますが、こうした報道には虚実混ざっているのが実情です。
例えば、無気力になる、怒りっぽくなる、幻覚や幻聴、妄想といった作用は基本的に大麻にはないことが分かっています。
下記では、一般的によく話題になる大麻の悪影響について取り上げ、その真偽性について説明します。
無気力になる
大麻常習者が挙げる症例の一つが「大麻を吸うと無気力になる」というものです。
これは「無気力症候群」と呼び、大麻によって手軽に幸福感を得られるため、次第に何もする気力が起きなくなり、物事に対して関心を失ってしまう状態です。
こうした状態は長期にわたって大麻を乱用することで引き起こされるもので、アルコール同様に適量をわきまえずに摂取し過ぎた結果によるものです。
また、違法ルートを通じて望むだけ大麻が手に入る環境にある場合や、社会的な接点を失った人の場合などは、特に大麻を乱用するリスクがあります。
大麻乱用者を未然に防ぐためには、購入や所持できる量を制限するなど、公的なコントロールや管理が重要になります。
怒りっぽくなる
大麻を吸うと怒りっぽくなるという報道に関しては、事実に反していると言えます。
基本的に、大麻は摂取すると深いリラックス効果をもたらすため、むしろ怒りや恐怖などのネガティブな感情を抑制する効果があります。このため、海外では不安障害やパニック障害の治療薬として大麻が処方されています。
このような風説が広まった要因として、常習者の告白が考えられます。麻薬常習者は多くの場合、大麻以外のドラッグも使用していることが多く、他のドラッグの症状と大麻のそれとを一緒にしている可能性があります。
怒りの感情を増長させるドラッグとして、覚せい剤やコカインが挙げられます。こうしたドラッグは摂取した人を興奮状態に陥らせ、時には攻撃的にする作用があります。
また、禁断症状や離脱症状として極端に神経質になる、怒りっぽくなるなどの特徴があり、大麻の作用とは明確に異なります。
幻覚や妄想
大麻には基本的に幻覚や妄想などの作用はなく、離脱症状もないことが分かっています。
ただし、経験の浅い人が大麻を摂取し過ぎた場合、もしくは極端に不安な状態で大麻を摂取すると「悪酔い」することがあります。
例えば、不安感が増して疑い深くなる、ネガティブな思い込み、周囲の目線が気になる、気分が悪くなるなどの状態が挙げられます。
こうした状態は「バッドトリップ」といい、大麻の経験が少ない人にありがちですが、通常であれば大体30分~1時間程度で収まります。
また、大麻には幻覚作用はなく、ないものが見えたり、聴こえない音が聴こえる、といった作用は基本的にありません。
こうした幻覚作用は主にLSDやマジックマッシュルームなどの幻覚系のドラッグの特徴であり、こちらの場合も大麻の作用とは異なります。
大麻の安全性のホント
このように、世界的には大麻が他のドラッグよりも危険性が低く、また適切な管理によって多くのメリットを得られることが知られています。
ですが、「大麻は安全」とだけ言われても中々イメージが掴みづらく、他のドラッグと比べてどの程度の安全性があるのか気になると思います。
下記では、アルコールやタバコを含む他の様々なドラッグとの比較検証をしていきます。
大麻の依存性はアルコールやタバコよりも低い
多くのドラッグが最も問題になりやすい要因が、その強い依存性です。
タバコは身体的な依存性が極めて高く、またアルコールも同様に中毒者を生み出しやすいことはよく知られています。
この点、大麻はタバコやアルコールよりも依存性が低いとされており、アメリカ前大統領のバラク・オバマ氏は「大麻はアルコールほど危険ではない」と発言しています。
こうした発言を裏付ける調査として、コロンビア大学が2011年に発表した調査結果が挙げられます。
それによると、アメリカ人のうちアルコール依存に陥りやすい人の割合は22.7%、タバコは67.5%、大麻は8.9%という数値が出ています。
また、ドイツのドレスデン大学の調査では、暴露マージン法という手法を用いて、大麻、タバコ、アルコール、エクスタシー、コカイン、覚せい剤、ヘロインの危険性をそれぞれ比較しました。
その結果、最も危険性が高いのがアルコールで、次いでヘロインとコカイン、タバコを挙げています。そして大麻は最も危険性が低い「低リスク」に分類しており、アルコールの危険性の1/114と示しています。
大麻に含まれる有効成分「CBD」
大麻の安全性が科学的に証明されつつある一方で、現時点では日本で大麻は違法薬物として指定されています。
ですが、国内では大麻を全く利用できないかというとそうではなく、実は大麻草から抽出される「CBD」という成分は、日本でも合法です。
CBDの正式名称は「カンナビジオール」といい、現在ではCBDを含んだオイルやリキッド、カプセルなどの様々な形式で、主にサプリメントとして発売されています。
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大麻から抽出されるCBDは別物
一般的にイメージされる麻薬としての大麻とは異なり、CBDは摂取してもハイになったり、感覚が鋭敏になるなどの向精神作用はありません。
むしろ、CBDは健康増進に役立つ成分として、摂取するとリラックスしたり、疲労の回復、寝る前に飲むと夜ぐっすり眠れるなどの効果があります。
CBDはユーザーの体調や体質に応じて作用するため、緊張時にはリラックス効果を、眠い時に摂取するとスッキリとした気分になれます。
現在、日本で大麻を規制する「大麻取締法」では、基本的に大麻のつぼみと葉、根っこの部分を規制していますが、それ以外の茎と種の部分は規制していません。
そして、CBDは主に大麻草の茎の部分から抽出される成分であるため、日本でも合法として扱われます。
WHOがCBDの安全性を認定
大麻合法化の潮流に応じて、CBDもまた世界的に注目を集めています。
その効果は国連も認めており、WHO(世界保健機構)が2017年に発表した報告書では、CBDの安全性を証明するいくつかの根拠を挙げています。
まず、乱用のリスクを調べる実験結果では、CBDは依存性につながる脳内自己刺激あるいは嗜好性にほとんど影響せず、依存性はほとんど無いと述べています。
また、動物実験ではCBDには向精神作用がないことが証明されており、これによって乱用や依存の可能性を否定しています。
CBDは多くの病気に効果がある
CBDはサプリメントとしてだけでなく、多くの病気に効果を発揮する医薬品としても活用されています。
国内ではCBDは医薬品認定されていませんが、アメリカなどの海外ではCBDを用いてうつ病やパーキンソン病、てんかん、アトピーなどの多くの病気の治療にCBDが使用されています。
この他にもCBDが効能をもたらす病気は数多くあり、不眠症や統合失調症、摂食障害、薬物・アルコール依存、骨粗鬆症、便秘、慢性痛など、多くの病気に対して治療・緩和効果があることが分かっています。
CBDは体内でハイになる成分に転換されない
上記で、CBDは摂取してもハイにならないと述べましたが、これは大麻に含まれている成分によって作用が異なることに依ります。
大麻草には60種類以上もの成分が含まれており、これらは「カンナビノイド」という総称で呼ばれています。
CBDは大麻草から抽出される主要カンナビノイドの一つですが、もう一つの主要成分が「THC(テトラヒドロカンナビノイド)」というものです。
THCには摂取するとハイになる作用があり、一般的に大麻=麻薬というイメージがあるのはこのTHCに依ります。
海外では、様々な病気の治療薬としてTHCを含んだ大麻全般が活用されていますが、基本的にTHCとCBDはまったく異なる作用をもたらします。
CBDに依存性はない
また、上記で述べたWHOの調査報告にもある通り、CBDには依存性がなく、高用量を摂取しても中毒にはなりません。
この他、CBDは一定以上の摂取量を超えると効果が一定化するため、アルコールのように過剰摂取による心身の健康を損なうリスクがありません。
依存性や過剰摂取の心配がなく、かつ手軽に摂取できて、健康増進や病気予防などの様々な目的で役立つCBDは、今後更に注目を集めそうです。
まとめ
近年、多くの国で大麻が合法化、もしくは非犯罪化などの規制緩和が潮流となっており、大麻に対するイメージが急速に変わりつつあります。
現在では、大麻の効能や危険性を調べる数多くの研究によって、大麻が長らく言われてきたほど危険性が高くないことが分かっています。
また、大麻は数多くの病気治療に役立つ画期的な植物であることも分かっており、医療大麻の合法化はアジアを含む世界中で進んでいます。
日本でも大麻成分のCBDを用いたサプリメントが普及しつつあり、大麻がもたらすポジティブなメリットは、今後更に知られていきそうです。