大麻は、医療用としても身体に様々な効能をもたらしますが、摂取を続けると薬のように効きにくくなってしまうことはないのでしょうか。
常用している人と初めて摂取する人とでは、効果が続く時間や効き目に違いはあるのでしょうか。
この記事では、大麻の耐性と効果の持続時間について詳しくご説明します。
大麻摂取による高揚感(ハイ)への耐性
大麻を摂取すると高揚感が生じ、いわゆる「ハイ」の状態になりますが、大麻の摂取を続けると身体が慣れていって、どんどん量が増えてしまうということはないのでしょうか。まずは大麻を摂取した際の耐性について詳しくみていきましょう。
そもそも耐性とはなにか
耐性とは、医薬品などを繰り返し投与するうちに、効力が低下したり、同じ効果を得るためにより多くの量が必要になることをいいます。
薬の多くは摂取を続けると耐性が作られます。市販の鎮痛剤なども耐性があるとされ、慢性的に飲んでいるとだんだん同じ量では効かなくなってくるという現象がみられます。痛くなったときに使用するくらいの頻度では耐性はつかず、続けて多量に摂取すると形成されます。
睡眠薬などは耐性が現れやすいといわれており、最初は1錠飲んでふらふらになるくらい効きが良かったのが、だんだん身体に変化を感じなくなり2錠、3錠とどんどん量が増えていきます。それでも効かなくなると今度はアルコールと一緒に服用したり、別の薬と合わせて飲んだりする方もいるようです。
これらの薬も一度間を空けると耐性は弱くなりますが、その期間薬を絶たねばなりません。痛みや不眠で悩む方は薬なしで過ごすことは難しいため、なかなか耐性を弱めることはできず、薬の量が増えてしまう一方のようです。
抗うつ剤や抗不安薬も同じで、耐性がつくばかりか依存性もあるため、副作用に悩まされながらも服用を続けざるを得ない方が多くいるようです。
大麻の耐性の仕組み
薬と同じように、大麻草カンナビノイドのTHCも耐性ができる傾向にあります。大麻は少量の摂取であれば耐性が作られることは少なく、一度に大量のTHCを摂取したり、常用を続けると耐性が形成されることが分かっています。動物実験でも一度に大量のTHCを与えると、動物はその後のTHC投与には反応しなくなります。
耐性が作られる仕組みとしては、大量に繰り返しTHCを投与することにより脳内のカナビノイド受容体の反応が鈍くなったり数量が減ることにより耐性が作られるとされています。
具体的にはTHCの摂取を繰り返すことでCB-1受容体連結部の密度が低くなって耐性ができると考えられ、THCに対して耐性ができると同じ大麻草カンナビノイドの成分にも反応しなくなることが分かっています。
大麻の耐性の自動消滅
大麻の耐性は、1日~数日ほど置くと自動的に消滅するといわれています。大麻常用者の間では、耐性ができると使用頻度を抑えて一定期間摂取をストップすることで耐性を消し、再度使用するという習慣があるようです。
大麻の耐性が消えるスピードは他の薬物にくらべて早いため、多量に摂取しなければならない事態になりづらく乱用の可能性も低くなります。
例えば覚せい剤は繰り返し使用すると急速に耐性がつき何倍もの量を服用しないと効果を感じなくなります。耐性が消えるのは約10日ほどといわれますが、覚せい剤は離脱症状がひどいためほとんどの人は10日間も覚せい剤なしで過ごすのが難しく、摂取量がどんどん増えていき、薬物中毒に陥る人が多いのです。
その点、大麻は依存性が低いため耐性が消えるまで待ちやすいのも特徴の一つです。
高揚感(ハイ)の二つの種類
大麻を頻繁に摂取すると耐性ができ、ハイになる効果が薄れることがあると説明してきましたが、そもそも大麻によるハイとはどんな状態を指すのでしょうか。
ハイというとテンションが高くなって何でも楽しくなる、というようなイメージがありますが、大麻が引き起こすハイはそれだけではありません。大麻によるハイには、脳に作用するヘッド・ハイと、身体に作用するボディハイの2種類があります。それぞれどんな特徴があるのか、詳しくみていきましょう。
大麻の高揚感の種類1:ヘッドハイ
脳に作用する「ヘッドハイ」は、以下のような特徴がみられます。
音や光に敏感になり、全てが鮮明に見える
頭の中がすっきりしてクリアになり、音や光に敏感になります。音楽を聞くとひとつひとつの楽器の音が独立して聞こえるようになり、例えばクラシック音楽ならバイオリンやチェロ、ピアノ、ホルンなどそれぞれの楽器の音がはっきりと認識できるようになります。曲に感情が深く入り込み、楽しい曲を聞くと心底ハッピーな気分になったり、悲しい曲を聞くと辛くてたまらなくなり涙を流したりもします。
聴覚のほか視覚も鋭くなり、目に映るもの全て鮮やかに見えるようになります。そのため、風景の綺麗な場所ではその美しさに心から感動したりします。また直感力も高まり、普段は思いつかないような素晴らしいアイデアが浮かんだりします。アーティストやミュージシャンで大麻を使用する人が多いのはこのためです。
気分が高揚して何でも楽しくなる
気分が高揚して、周囲の人のすること、取るに足らない会話の内容全てがとても面白く感じます。人が笑っているとつられて笑いが止まらなくなったりして、楽しい時間が過ごせ、大麻の効果が切れた後もあの時は楽しかったなと思いかえすほどです。ただ、大麻を吸っていない人から見ると明らかにハイになっているのが分かります。
幸福感、多幸感に包まれる
気持ちが穏やかになって幸福感・多幸感に包まれます。身体の内側から愛情があふれ出るような感じで、家族や友人はもちろん知らない人に対しても優しさや愛おしさでいっぱいになります。生きていること、周囲のありとあらゆること全てに感謝ができ、胸いっぱいに広がる幸福感を噛み締めることができます。
ヘッドハイには主にこのような作用があります。ヘッドハイは大麻の中でもサティバという品種を摂取した際に強く現れます。サティバ種は主に大脳に作用し、 THCの含有率が高いものだと脳への刺激が強過ぎて、幻覚を見たり、パニックを起こすバッドトリップをするおそれもあり注意が必要です。
バッドトリップ
バッドトリップとは直訳すると「悪い旅行」という意味で、大麻に対する恐怖心や罪悪感がある状態や強い不安やストレスを抱えた状態で使用した場合に、一時的にパニック状態に陥ったり、気分が落ち込んでしまうことをいいます。 ネガティブな思考にとらわれてしまい、気分が悪くなったりします。
過剰に摂取してしまった場合や、THCを多く含む品種を摂取した場合にも起こりやすく、脳への刺激が強く頭が冴え過ぎて考えが止まらなくなりパニック状態になったりします。
バッドトリップは必ずいつか覚めるので、いっそのこと寝てしまったり、好きな音楽を聞いて心身をリラックスさせると早く抜け出せるようです。
大麻の高揚感の種類2:ボディハイ
では次に身体に作用する「ボディハイ」について詳しく見ていきましょう。「ボディハイ」には以下のような特徴がみられます。
力が抜け、リラックスできる
大麻には筋弛緩作用があるため、摂取すると全身の緊張が解け、深くリラックスできます。気持ち良いふわふわした感覚になり、身体が心地よく重くなります。身体がソファに沈み込んで動けなくなるような状態は「カウチロック」とも呼ばれます。
痛みが和らぐ
大麻には鎮痛作用があり、頭痛や肩こり、腰痛、歯痛などの痛みを緩和してくれます。女性の生理痛や生理前の不快な症状にも効果的です。神経痛も和らげてくれるため、スポーツ選手が鎮痛目的で使用する場合も多いです。
眠気を感じる
大麻を摂取すると多くの人は眠気を感じます。筋肉のこわばりが解けることで身体が楽になり、リラックスして眠気を感じると考えられています。また、大麻には不安やストレスを緩和する作用もあるので安心して緊張が緩み、眠気を誘うともいわれています。
そのまま眠ってしまったときはスピリチュアルな夢を見ることもあり、夢の中で、自分や周囲の人、起こる出来事全てが繋がっていることを体感できたりもします。人生やこの宇宙を悟ったような感覚になることもあります。翌朝は特に倦怠感などはなく、スッキリと目覚められます。
不眠症の方が大麻を使うと、入眠しやすくなり症状の改善がみられるため、医療大麻が合法の国では多くの不眠症の方に大麻が処方されています。
お腹が空く
大麻を摂取すると、THCが体内のカンナビノイドを刺激して空腹を感じるホルモンを放出させるため、たとえ満腹でも空腹感を感じ、猛烈な食欲が湧いてきます。特にハンバーガーやポテトなどの油っぽい食べ物やこってりしたスイーツが欲しくなります。
味覚も鋭敏になるので、食べると驚くほど美味しく感じます。普段小食の人もビックリするくらいの量を食べ、嫌いなものすら美味しく食べられるようになりますす。この状態は「マンチーズ」と呼ばれています。
ストレスが緩和される
大麻には鎮静効果があるため、落ち着きを取り戻し、冷静に物事を見たり考えたりできるようになります。ストレスや不安からも解放され、心が休まるので夜や寝る前に服用するとスムーズに眠りに入れます。また、心が波立たない状態は内観の助けとなり、ヨガや瞑想とも非常に相性が良いです。
ボディハイは、主にこのような作用がみられます。ボディハイは主にインディカという品種が多く含まれている大麻を摂取した際に現れます。インディカは身体への作用が大きく古くから治療目的としても利用されてきた品種です。
高揚感(ハイ)の長さが変化する要因
このように、ハイには二つの種類があることが分かりました。続いては、ハイが継続する時間の変化についてご説明していきたいと思います。ハイの長さは人によって違うのでしょうか。違うとすれば、何が要因なのか詳しくみていきましょう。
大麻の有効成分への耐性の変化
まず、ハイの長さは個人の大麻に対する耐性によって変化します。初めて吸う人は頻繁に吸っている人にくらべて少量で効果が出ます。
耐性がついている場合は、効果が早く切れることも多いです。同じ人でも、数日大麻を控えて耐性を消すと、また効き目が良くなったりします。
大麻の摂取量
ハイの長さは大麻を摂取する量によっても変化します。初心者の方は、適量が分からず摂取しすぎてしまうことも多くみられ、パニックになり心地よいハイとならずバッドトリップとなってしまうこともあります。
大麻の有効成分THCの含有量
ハイの続く長さは、大麻に含まれるTHCの量によっても異なります。
THCはテトラヒドロカンナビノールの略で大麻草カンナビノイドの成分の1つです。大麻草の葉、花、穂からとれる成分で、服用すると高揚感や多幸感を感じるなど強い精神作用があります。
THCが多く含まれていると、早く効果が現れ、効き目も強く、効果も長くなる傾向があります。一般的に高品質の大麻には多くのTHCが含まれています。しかし効きが良い分、刺激が強いため摂取する際には注意が必要です。
大麻摂取による高揚感の持続時間
様々な要因で大麻によるハイの時間が変化することが分かりました。では次に、大麻摂取によるハイはどのくらいの時間持続するのか、具体的にみていきましょう。
一般的な持続時間
一般的に大麻のハイは2〜3時間継続するといわれています。初めて大麻を摂取する場合は長く続き、ある程度耐性がついている場合は1時間以内に効果が切れてしまうこともあります。
摂取方法による変化
ハイの長さは、大麻の摂取方法によっても変化します。大麻の摂取方法はいくつかあり、代表的なのはバッズ、ワックスベープ、オイルベープと呼ばれる方法です。一般的にバッズが一番効き目が強くハイの時間も長いです。それぞれの摂取方法についてご紹介します。
バッズ
バッズとは、大麻草の花のことです。摂取する際は、バッズを細かくして、ガラスや金属製のパイプや水パイプなどの喫煙具を使って吸ったり、紙に巻いて吸ったりします。紙に巻いて吸う方法はジョイントと呼ばれます。
吸い込んだ直後からハイになり、15~30分後に最高潮の状態に達します。その後効果が消えていき、ハイの全体としての時間は1時間ほどになります。
ワックスベープ
ワックスベープとは、バッズからTHCを抽出したとろみのある液体で、バッズよりも効率的にTHCを摂取できるのが特徴です。ワックス用のヴェポライザーを使って蒸気を吸引します。
バッズと同じく吸ってすぐに効果を感じ、ワックスベープの場合、最高潮も吸い込んだ直後に現れます。そこから10分ほど高いハイが続き、効果が消えていきます。ハイの合計時間はだいたい30分ほどです。
オイルベープ
オイルベープとはバッズからTHCをCO2抽出して作るオイル状の液体で、抽出の際に有害物質が入らないため効能がダイレクトで、人気の摂取方法です。ヴェポライザーで蒸気を吸引するほか、肌に塗ったりしても効果が得られます。
ワックスベープと同じく吸い込んだ直後に一番ハイを感じ、約10分経過してから抜けていきます。ハイの合計時間はワックスとそこまで変わらず1時間以内です。効き目はワックスベープにくらべると弱いといわれています。
エディボーによる摂取での持続する時間
一般的な摂取方法としてバッズ、ワックスベープ、オイルベープをご紹介しましたが、エディボーと呼ばれる大麻の摂取方法もあります。最近注目を集めるエディボーとはいったいどんな方法なのか、詳しくご説明します。
エディボーってなに
エディボーとはいわゆる大麻入り食品のことで、大麻入りのチョコレートやマカロン、クッキーなどがよく製造されています。THCが含まれているため日本では違法ですが、欧米では普通に市販されていて、手軽なためとても人気です。
エディボー摂取による持続時間まとめ
いかがでしたでしょうか。
大麻の耐性とハイになる時間が変化する要因、ハイの持続時間について詳しくご紹介してまいりました。
最後に、簡単にポイントをまとめてみます。
・大麻は常習すると耐性が作られ、以前と同じ量では効きにくくなる
・大麻の耐性はしばらく期間を空けると自動消滅する
・ハイが続く長さを決める要因は、個人の耐性・大麻の摂取量・大麻に含まれるTHCの量
・ハイの持続時間は、大麻の摂取方法によっても異なる
・大麻の摂取方法にはバッズ、ワックスベープ、オイルベープ、エディボーなどがある
大麻も、薬と同じように耐性がありますが期間を空けることで耐性が消滅し効き目が戻ります。また、ハイになる時間は個人の慣れや大麻の種類、摂取方法など様々な要因によって決ることが分かっています。