CBDオイルは、大麻草から抽出されるCBD成分含んだ、不眠や疲労、慢性痛に効果があるといわれているオイルです。日本でも手に入り、日々の不調を軽くしてくれると人気を集めています。
そんなCBDオイルがてんかんに効果があると注目を浴びています。まだ実験段階ですが、効果が認められれば治療を行っても改善がみられない難治性てんかんの患者さんにとって、希望の光となります。
本記事では、そもそもCBDオイルとは何なのか、てんかんに本当に効果があるのか、詳しく説明していきます。
CBDオイルとは
CBDオイルとは、大麻草からとれるカンナビジオールという成分を飲用できるように加工した商品です 。医薬品ではありませんが、肩こりや腰痛、不眠、不安といった身近な症状をはじめ、うつ病や糖尿病、皮膚炎、自己免疫疾患など100以上の疾患に効果を発揮すると欧米を中心に話題になっています。
近年、世界各国で医療目的などで大麻が合法化されており、日本でも話題になる機会が増えています。 日本では大麻は違法薬物ですが、大麻草に含まれる「CBD」という成分は日本でも合法で、CBDを用いたオイルなど様々なサプリメントが発売されています[…]
合法なので大麻が禁止されている日本でも使用できますが、大麻草からとれる成分と聞いて不安を感じる方も多いのではないでしょうか。まずは、CBDオイルについて詳しくみていきましょう。
大麻とCBDの関係
CBDは、大麻草に少なくとも113種類含まれているカンナビノイドと呼ばれる植物成分の一つで、大麻草のカンナビノイドの40%ほどを占めています。CBDは大麻の茎と種から抽出され、服用しても精神作用はなく幻覚を見ることもありません。
もう一つ、CBDとともに大麻草のカンナビノイドの多くを占める成分にTHC(テトラヒドロカンナビノール)があります。THCは大麻草の葉、花、穂からとれる成分で、服用すると高揚感や多幸感を感じるなど強い精神作用があります。依存性もあり、いわゆる「ハイになる」ドラッグとして用いられる大麻にはTHCが含まれています。
THCは違法!CBDは合法
大麻草から抽出する成分なのに、CBDは違法ではないのでしょうか?気になるところですが、大麻取締法第一条には以下のような記述があります。
この法律で「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く。
つまり、茎と種から抽出するCBDは合法ですが、葉や花からとれるTHCは違法と定められています。ちなみに医療大麻が日本で違法なのは、医療大麻にTHCとCBDが両方含まれているからです。
このように、CBDは合法とはっきり認められており日本でも心配なく使うことができます。
CBDオイルはてんかんに効く?
このように安心して使えるCBDオイルですが、効果があるといわれる疾患の一つに「てんかん」があり、研究が進められています。
CBDオイルは本当にてんかんを改善することができるのでしょうか?
てんかんとCBDオイルの関係について詳しく説明します。
てんかんとは
てんかんとは、大脳の神経細胞が過剰に興奮して異常脳波が発生し、発作が起きてしまう脳の病気です。異常電波が脳のどの場所で発生するかによって現れる発作の症状が異なり、身体の一部分が勝手に動いたり、けいれんしたり、突然意識がなくなって倒れたりなど様々な症状がみられます。
てんかんの原因は、生まれつきのものから、脳腫瘍などほかの病気が原因となるもの、認知症による脳の老化などがありますが、多くははっきりとした原因が分かっていません。日本のてんかんの患者さんは100人に1人といわれ、年齢問わず子どもから大人まで発症します。
主な治療法は、発作を予防する抗てんかん薬の服用と食事療法になりますが、治療を続けても症状が改善せず、てんかんが慢性化してしまう方もいます。このような方は難治性てんかんと呼ばれ、てんかんの患者さんのうち約3割が難治性てんかんと診断されています。
難治性てんかんの方は、日々服用する薬の量を増やし副作用と闘いながら過ごすしかなす術がないのが現状です。
CBDがてんかんに効く可能性はあるの?
CBDオイルがてんかんに効果を発揮する可能性は大いにあるといえます。それは、CBDオイルに含まれる植物成分カンナビノイドが人間の健康維持に深く関係しているためです。
実は、人間をはじめとした全ての脊椎動物は体内にカンナビノイドを保有しており、カンナビノイドを通じて、行動や感情、免疫調整、認知機能などをコントロールしています。これをECS(エンド・カンナビノイド・システム)と呼びます。
しかし、ストレスや加齢、環境ホルモンの影響で体内のカンナビノイドが減ってしまうとECSが機能しなくなり、がんや認知症、うつ病や不安神経症といった様々な病気を引き起こす原因になってしまうのです。
そこで、植物由来のカンナビノイドを使用して体内のカンナビノイドの欠乏を防ぐことで、症状の改善がみられるのではないかと研究が進められています。
てんかんは体内のカンナビノイドの欠乏が原因で起こる疾患の一つに挙げられるため、CBDオイルがてんかんの新たな治療法に加わる可能性は高いといえるのではないでしょうか。
アメリカでは大麻由来のてんかんの薬がFDAによって承認
実際にアメリカでは、FDA(食品医薬品局)が大麻由来のてんかん治療薬を承認し、医薬品業界に大きな衝撃を与えました。
FDAではこれまで大麻や大麻の成分を含む製品の承認を行っていませんでしたが、2018年ついに難治性てんかんの治療薬としてCBDを含む薬剤を承認し、2歳以上の患者さんに使用可能としたのです。
承認を受けたのは、イギリスのGWファーマシューティカルズ社が開発したエピディオレックスという薬です。イチゴ味のシロップ状の薬で、CBDオイルの医薬品グレードという位置づけになります。
エピディオレックスは、てんかんの中でも難治性てんかんであるレノックス ・ガストー症候群とドラべ症候群の発作の治療薬で、FDAも薬の使用をこの2つの病気に限定しています。
レノックス ・ガストー症候群
レノックス ・ガストー症候群とは、8歳未満の小児期に発症する難治性てんかんの1つで、特徴的なてんかん発作が何種類も出現し、脳波検査では独特の異常な脳波がみられます。脳の発達において非常に大事な時期である小児期にてんかん発作が頻発して起きるため、脳がダメージを受けて発達が妨げられ、精神や運動機能に遅れが生じます。
レノックス ・ガストー症候群と診断された患者さんの90%以上に知的障害が残り、その多くは重度の知的障害です。子どものてんかん患者さんのうち、レノックス ・ガストー症候群の割合は0.6~4%程度といわれています。
ドラべ症候群
ドラべ症候群は、乳幼児期に発症する難治性てんかんの1つで、生後1年以内に特徴的なてんかん発作を発症し、1歳を過ぎるとさらに様々な発作が現れます。レノックス ・ガストー症候群同様、脳の成長に重要な時期に発作が起きることで発達が阻害され、個人差はあるものの、患者さんの半数以上がIQ50以下といわれています。また、ドラべ症候群と診断された方の約20%弱が成人になる前に突然死や急性脳症で亡くなるとされています。発症率は2~4万人に1人といわれています。
両者とも子どもの希少疾患で、難病に指定されています。治療には、複数の発作を抑えるため何種類もの抗てんかん薬が多量に使われますが劇的に改善がみられることはなく、本人や家族にとって非常に深刻な病気です。
GWファーマシューティカルズ社では、レノックス ・ガストー症候群とドラべ症候群の患者さんに対しエピディオレックスの臨床実験を行い、120人の患者さんの発作回数が平均約40%減少したという結果を得ました。そして、大麻由来の成分を含んだ医薬品としても難治性てんかんの治療薬としても初となる、FDAの承認を受けたのです。
CBDオイルを使用したてんかんの方の実例
エピディオレックスではなく、CBDオイルでもてんかんが改善された実例があります。
シャーロットちゃんの事例
まずは、アメリカのニュース番組CNNで放送され大きな反響を呼んだ、コロラド州に住むシャーロットちゃんの例からご紹介しましょう。
シャーロットちゃんは当時5歳の女の子で、2歳のころ頻回のてんかん発作により、ドラペ症候群と診断されました。
ひどい時には一晩で50回近くもの発作が起き、何種類もの強い薬を試しても改善はみられず、薬の副作用で死にかけてしまったこともありました。
そんなシャーロットちゃんに、ご両親が最後の選択肢としてCBDオイルを服用させてみたところ、週に300回、1時間に2回、計6時間もあった発作が、9か月で0~1回にまで減少したのです。服用後の経過も良好で、栄養管をつけていた状態から、自分で食事をしたり歩いたりもできるようになっています。
シャーロットちゃんがCBDオイルを摂取することで劇的に症状が改善される過程と、CBDが若年層に与える影響についてまとめられた動画になっています。(動画は英語になります)
エミリーちゃんの事例
もう一つの実例が、重度のドラベ症候群に苦しむエミリーちゃんの例です。エミリーちゃんは4歳になった頃には全く話すことができなくなり、5歳になると、1日150回もの発作に悩まされていました。
シャーロットちゃんと同じように、投薬治療、食事療法を続けたものの効果がなく、医師にもほかに治療法がないと言われ、絶望的な状況に陥っていました。
ご両親は上記で紹介したシャーロットちゃんの放送をみて、コロラド州の医師のもとまで話を聞きにいく決断をします。
父親はエミリーちゃんに代替療法を試すため、当時CBDオイルが許可されていたコロラド州に飛び、話を聞きにいきます。
他の方法も全くなく、すがるような思いでCBD治療を始めることを決意します。
CBDオイルの服用を始めたところ、服用した日から発作の回数が半分にも減ったのです。エミリーちゃんは全快にはまだ時間が必要ですが、CBDオイルによって回復の可能性を十分に感じることができたのです。
このように、CBDオイルがてんかんの症状を改善する実例が報告されており、日本でもCBDオイルがてんかんの治療薬として認められる日も遠くないかもしれません。
まとめ
いかがでしたか?このように、CBDはてんかん発作の改善に、大きな効果を発揮しています。
最後に簡単にご紹介した内容をまとめてみます。
・CBDは大麻由来の成分だが、違法性や精神作用はない
・CBDはてんかんの改善に効果を発揮すると考えられている
・実際にCBDを含んだ難治性てんかんの治療薬がFDAに承認された
・CBDオイルがてんかん発作を抑えた実例も存在する
実は、2019年日本国内でも大麻由来のてんかん治療薬「エピディオレックス」の臨床が許可され、日本でも難治性てんかんの患者さんの治療に使用できる兆しが見えてきました。またCBDオイルも、現在は健康食品として扱われていますが、医薬品として多くの方に処方される可能性も大いに期待できます。
CBDが、1人でも多くのてんかん患者さんを救うことを願うばかりです。