昨今、大麻の所持や栽培などで有名・無名を問わず多くの人が検挙されたというニュースが話題になっています。
国内では、もっぱら違法薬物としてのイメージが強い大麻ですが、実は大麻は日本の伝統文化に深く根差した、極めて身近な植物であることはご存知でしょうか。
日本では、1万年以上前の縄文時代から大麻を様々な用途で用いてきた歴史があり、衣服や畳の素材、繊維、また宗教的儀式などの多くの目的で大麻が活用されてきました。
ゆえに、現在でも産業用途と研究目的に限って日本でも大麻栽培が許可されていますが、規制の厳しさや大麻栽培者の高齢化などにより、国内の大麻産業は衰退しつつあります。
しかし、産業用大麻は世界的に注目されつつあり、環境にやさしく様々な用途で活用できることから、米国をはじめ各国では大麻農業をより自由に行えるように、規制緩和が進んでいます。
そもそも大麻とは?
大麻というと、一般的には「ダメ、ゼッタイ!」というネガティブな印象を連想しやすく、普通に暮らしていると大麻について知る機会は殆どありません。
そのため、国内では大麻について正しい理解が浸透しづらく、大麻の依存性や危険性、また大麻が持つ医療効果などが誤解されやすいという課題があります。
しかし、海外では大麻が嗜好品として解禁されたり、様々な病気の治療手段として処方されるなど、世界規模では大麻に対するイメージが急速に変わりつつあります。
こうした世界的なトレンドから取り残されないためにも、まずは大麻とは一体何か、その具体的な作用や、どんな目的で活用できるかについて理解を深めることが大事です。
大麻って何?
大麻の正式名称は「カンナビス・サティバ・エル」といい、モミジに似た形の葉を持つ植物で、一般的にはマリファナという呼び名で知られています。
よくニュースで話題になる大麻とは、基本的に大麻草の花穂の部分を指すことが多く、いわゆる「乾燥大麻」とは大麻草の花穂を乾燥させたものを指します。
この乾燥大麻を燃やして煙を吸うと、多幸感や高揚感、五感の鋭敏化などの向精神作用、いわゆる「ハイ」になる効果があります。
これは、大麻草の主に花穂から抽出される「THC(テトラヒドロカンナビノール)」という成分の作用によるものですが、通説では大麻草には60種類以上もの天然成分が含まれており、これらは「カンナビノイド」という総称で呼ばれています。
大麻草から多く抽出される主要カンナビノイドとして、THCの他に「CBD(カンナビジオール)」が挙げられます。CBDは日本でも合法な成分で、リラックス効果や疲労回復、安眠などに役立つサプリメントとして、国内でもユーザーが増えています。
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しかし、大麻は人間の心身に作用するだけでなく、生活の様々な面で活用できる多用途な植物で、プラスチックなどの化学繊維よりも環境にやさしい天然素材としても役立ちます。
日本での大麻の使用用途
日本で大麻が本格的に規制されたのは戦後からで、それより以前は大麻は日本で極めて身近な植物であり、遡ること1万年以上前の縄文時代から大麻は繊維用の作物として栽培されていました。
縄文時代の遺跡からは、当時の人々が大麻由来の繊維で出来た衣服を着て、大麻の種を食物にしていたことが分かっています。大麻種子は「麻の実」として現在もスーパーなどで売られており、これは発芽しないように加熱処理されていますが、高い栄養価を含む食品として現在も流通しています。
他にも、大麻は日本の伝統文化の至るところに根付いており、力士が身に着ける化粧綱、弓道で用いる弓の糸、もしくは下駄の緒や紐、縄などの様々な目的で用いられてきました。
また、大麻草は神社のしめ縄や、様々な宗教儀式に用いられてきた歴史があり、大麻は日本の風土と密接に結びついた主要作物として、古くから認識されてきました。
このため、終戦時の1945年にGHQ(連合国軍総司令部)が日本を占領した際、当初は産業用途も含めて大麻を全面的に規制しようとしましたが、当時の農林省は日本での大麻の重要性を主張して交渉を続けた結果、1947年に施行された「大麻取締法」では、産業用途での大麻栽培を例外的に認可しています。
大麻栽培に許可は必要?
大麻というと、基本的には麻薬作用を持つ植物というイメージがありますが、産業用大麻から抽出されるTHCは0.3%以下と、麻薬成分を殆ど含まないのが特徴です。
こうした産業用途で栽培される大麻はおもに「麻」もしくは「ヘンプ」と呼ばれていますが、産業用大麻といえども栽培には都道府県の認可や様々な手続きが必要になります。
以下では大麻栽培に必要な手続きと手順について、簡単にご説明します。
大麻の栽培許可の申請方法
大麻栽培者になるには、まず最初に都道府県の保健所もしくは役所の薬務課へ出向く必要があります。
ここで申請書をもらって必要事項を記入する他、併せて様々な書類や、大麻の栽培計画書などの報告事項が山のようにあります。
基本的には、一定の条件を満たしていれば栽培は認可されますが、申請にかかる手間の多さや、世間的な大麻に対するイメージゆえに、大麻栽培者になる人の数は極めて少ないのが現状です。
大麻栽培の申請に必要な書類
大麻栽培の認可を得るために必要な書類として、まず医師の診断書を提出して、当人が大麻を含む麻薬中毒者でないことを証明する必要があります。
また、申請者の履歴書も必要で、過去に禁固刑以上の刑に処せられた場合、もしくは未成年の場合は栽培が認可されません。
この他、栽培する大麻の盗難を防ぐためのセキュリティ対策を記載した書類、また栽培場所を記載した平面図、栽培場所への案内図の提出も求められます。
更に、大麻の栽培目的、使用目的を記載した計画書、販売計画書、そして繊維などに使う部分以外の大麻草をどう処分するかを記載した処分計画書も必要になります。
これらの非常に多くの証明書類や計画書を提出して、はじめて大麻栽培の許可を申請できますが、いかに多くの手間が必要かが分かると思います。
大麻栽培の免許の有効年数
現行の大麻取締法では、産業利用と研究目的に限って大麻の栽培・所持が許可されますが、いずれの場合も大麻取扱者の免許が必要になり、目的以外で大麻を栽培・所持した場合は罰則の対象になります。
大麻取扱者は2種類あり、大麻栽培者と大麻研究者に分かれます。種類によって必要な免許も異なり、大麻栽培者であれば「栽培者免許」が、そして大学など大麻を研究する機関や麻薬取締関係者であれば「研究者免許」が必要です。
しかし、いちど免許を取得すればそれでOKという訳ではなく、基本的には1月1日~12月31日までのジャスト1年間が有効期限なので、大麻取扱者は毎年免許を更新する必要があります。
大麻栽培は基本的に違法
日本では、特定の目的に限って大麻栽培が許可されていますが、基本的には大麻取扱者でない場合は大麻の栽培はNGです。
無許可での大麻栽培は、大麻の所持や売買行為と同じく違法行為に相当し、もし発覚すれば懲役刑などの実刑が課される場合があります。
大麻栽培の許可なしでの栽培は完全に違法
よくニュースで、大麻草を大量に違法栽培した人が検挙された事件が報じられており、大量の大麻草の鉢植えが押収された写真を見たことがあるかもしれません。
こうした違法での大麻栽培は、殆どの場合は密売を目的としていますが、たとえ密売が目的でなくても栽培行為自体が法律で規制されています。
上記で述べた大麻取締法の第三条では、大麻に関する規制事項として、大麻の所持、栽培、売買などの譲渡行為の3つを禁止しています。
最も、ここでいう大麻とは、具体的には大麻草の葉と花穂の部分を指し、この2部分は麻薬成分であるTHCが抽出される箇所として知られています。
しかし、産業目的で利用される大麻草の茎と種に関しては規制対象外と定めていますが、花穂と葉を含む大麻草自体は規制対象となっています。
大麻栽培を日本で行っている農家の数
戦前、そして戦後間もない頃までは、大麻は一般市民の生活の隅々にまで浸透していた、極めて身近な植物でした。
そのため、近年まで国内で大麻農業に従事していた人の数は極めて多く、産業用大麻は日本の主力産業として位置付けられていました。
しかし、戦後に大麻が規制された後は大麻農家の数は減少の一途をたどり、伝統産業である大麻産業の衰退を危惧する声も少なくありません。
大麻を栽培する農家は減少傾向
大麻取締法が施行された1947年以来、大麻栽培者が最も多かった年は1954年で、この時点では約3万7,000人が大麻栽培者として登録されていましたが、2014年にはわずか35名にまで減っています。
半世紀の間に1/1000まで縮小したことになりますが、現在でも大麻は伝統文化の維持や、宗教儀式などを目的に神社などで用いられています。これらの目的で消費される産業用大麻の9割は中国産、もしくは化学繊維などへの置き換えが進んでいます。
しかし、大麻産業の衰退に歯止めをかけようとする取り組みもあり、大麻草の自生地でもある北海道では、同道の北見市が2008年に地域再生を目的に産業用大麻特区として認定され、2014年には一般社団法人産業用大麻協会が設立されています。
大麻農家が減少している理由
殆どの人にとって、大麻=麻薬というイメージがあるが故に、日本の伝統文化として大麻産業が根付いていたと聞くと意外に思うかもしれません。
大麻関連の摘発事件などに伴う世間的な大麻に対するイメージ、もしくは大麻栽培の許可を得る際の規制の多さなどが、大麻産業の衰退の要因として挙げられます。
この他、産業用大麻の栽培は多くの労力を伴い、真夏の7月に刈り取りを行い、大麻草を炎天下の元で熱湯に通すなどのタフな作業が必要になります。農業に従事する人の数が減りつつある現在、大麻栽培に従事するための動機付けを得にくいという課題もあります。
しかし、大麻草の用途は極めて多く、衣類から燃料、肥料、紙、医薬品、食品、建材、美容目的などと幅広く、一説では大麻は25,000以上もの用途で活用できると言われています。
また、大麻草は栽培に農薬や化学肥料を必要とせず、短期間で成長するため収穫の効率がよく、害虫に強いという性質があります。このため、海外では産業用大麻に注目が集まり、米国は2018年に産業用大麻に関する規制緩和を行い、大麻の大規模栽培を認めています。
比較的栽培のしやすい産業用大麻によって、農業従事者の所得向上が見込まれる他、化学繊維に取って代わる多目的な素材として活用できるので、環境保全にも役立つなどの多くの長所が挙げられます。
まとめ
最後に、本記事でお伝えした内容をポイントにまとめてみます。
・大麻は作物として、繊維や食物などの様々な目的で活用できる。
・日本では、戦前~前後間もない頃まで大麻産業が根付いていた。
・大麻は日本の伝統文化と密接に関わっている。
・産業用途と研究目的に限って、日本でも大麻栽培が許可されている。
・しかし、大麻栽培者になるには多くの手間がかかり、国内の大麻農業は衰退傾向にある。
海外で進む大麻合法化は、一見すると日本とは無関係に見えますが、大麻は日本の歴史に深く結びついています。
古来より、日本人の生活の身近な部分に、また伝統を維持するために大麻が極めて重要な要素であったことは、海外で進む大麻合法化の潮流と共に広く知れ渡ってほしい事実です。